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after Birthday ※視点は惠

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僕の考えた惠ルート ※視点は智

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FD感想(ネタバレ全開注意) 


 終章まで再プレイしてなんともかんとも心がだいばくはつ!ということで総括感想を書いてみたいと思います。
総括といっても昇格組ルートと4章と終章。あと相変わらず惠に偏った内容です。
智惠熱(深海さんの名言)で脳が溶けてる人間の戯言と思っていただければと思います。
ネタバレは全開というかネタバレしかないような状態なのでお気をつけくださいー。

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1章【宮和ルート】

 よい意味で「発売前にユーザーが“ファンディスク”に期待していた内容」のお話だったと思います。(温泉編もそんな感じ)
 適度なサイズの問題が起こり、適度にすれ違って、適度にくっついて、みんなで何かを成し遂げる。
 イメージとしてはるいルートやこよりルートに近いかな?
 宮が呪い持ちでないからこその「踏み込まない気楽さ(いい意味で)」に満ちていて、だからこそみんなが幸せな姿でいられる……そういう、夢のようなお話。
 バンド組んで練習するというのはグループ内の結束を深めるためにはもってこいのシチュエーションだし、それがより集まって「音楽」という一つの形をなす、まさに理想の展開でした。
 ていうかここのためだけに一曲用意するってどれだけ贅沢なんだ……!
 あと宮のお父さんの懐の広さハンパない。あの状況で拍手できるあなたはすごい。
 そして、全ルート通して唯一惠が「いつもと違う服装(過去と連動しない格好)」をするルートでもあります。惠ルートで明らかにされる事情を思うと、ここで一瞬でも違う格好をしたことはすごく意味があることなんじゃないかなと思ったり。

 なお、ここで出てくる「敵」は典型的なイジメグループリーダーで、精神攻撃をかけてきますがあくまで「日常」の範囲内。同盟に害はなく、智ちんが反撃すれば一発KO。出てきた「敵」がこの程度(あえてこの表現)であったことも、このルートを平和に終わらせた非常に大きな要因だったと思います。



2章【央輝ルート】

 よい意味で「発売前にユーザーが“攻略ルート”に期待していた内容」のお話。
 本編では出番が少なかったけれどとてもいいキャラ付けがされていて、おそらく昇格組で最も人気があっただろうゆんゆんのお話。彼女の一匹狼感、それを智ちんが、同盟が懐柔し、仲間に引き入れていく過程が丁寧に描かれています。
 人気キャラである央輝にポイントを絞り込み、ユーザーの期待に応えた丁寧なお話だなーという印象でした。
 オヤジスキー的に常務がツボ過ぎて常務うわあああああああにはなりましたが(おい)、あの感覚はゆんゆんルートならではだなと。
 あとれんふーさんがいいキャラ過ぎて困る。頼りがいがあって信頼できるのにある一点においてどうしようも無い変態とか素晴らしすぎる。実力者はどこかネジが飛んでるんですねわかります。れんふーさんは他ルートで絡んできてもよかったかなぁ。

 なお、ここで出てくる「敵」はゆんゆんから家族を奪うという一線を踏み越えた悪。ただ彼女もまた「家族を奪われた」存在であり、一種ゆんゆんの対比となっていたように思います。ゆんゆんはみんなと智がいたから踏みとどまれたけど、彼女は孤独だったがゆえに踏みとどまれなかった……そんな感じ。そしてこの敵は同盟に直接の危害は加えません。それがために、敵との関わりは「仲間を助ける」という善意の範囲内で収まります。


3章【惠ルート】

 ……そして、暁worksは本気を出した。というお話。
 よい意味で「発売前にユーザーが想定していなかった内容」のお話。まさか宮→央輝の流れでこのBADな話が来るとは……。
 団結していた仲間たちに亀裂が走り、智ちんは「隠し続ける」ことで惠を守ろうとし、決断はズルズルと先延ばしにされ、罪と現実を前に恋人になった二人の心はすれ違い、同盟は「何もしない、できないままで」「核(智ちん)を失う」。
 そして本編FD通して唯一の、智ちんが「同盟」を捨てるという結末。
 どう見てもBADです本当にry

 このルートのキモは智ちんが「仲間に助けを求めなかった」ところだと思います。られなかった、という言い方もできますが……
 本編FD通して、智ちんは何か問題が発生したら最後はいつも「同盟」で立ち上がってきました。るいも、花鶏も、こよりも、伊代も、茜子も、宮和も、央輝も、最後は同盟の力を借りました。
 しかしここで初めて「同盟の力を借りない」という道を選択します。借りたらもっと違う未来が見えただろうな、とは誰もが思うところでしょう。
 
 個人的に、惠ルートでは智ちんの弱さが露呈した感じがしました。
 すなわち『選べない』という弱さ。それは智ちんの強さでもあるのですが、今回は弱い方に働いた。

 智ちんが仲間に助けを求めなかったのは『惠の真実が重すぎるから』『知らなければ幸せでいられるから』ということになってますが、実は違う、というかそれだけじゃなくて、もっと根本的な理由があったんじゃないか。
 
 要は『みんなに話して、みんなが惠を受け入れなかったとき、自分はどうすればいいのか』という現実を引き寄せたくなかったのではないか。
 他ヒロインとはワケが違う、惠の秘密。過去に留まらず、現在、未来までも続いていく悪夢。
 誤解を恐れずに言えば、茜子さんルートで智ちんは惠を捨てる道を選びました。あれは智ちんが「茜子さんを選んでいた」がための決断だったと思うのです。良い悪いではなく。
 仲間を失う痛みと恋人を失う痛みは違う。惠を恋人にした以上、惠を失う痛みを選べるわけがない。だからと言って……堂々めぐり。
 でも、言わなければ、選ばなくてすむ。選ぶ場面にさえ遭遇しなければ、自分は両方を手にしたままでいられる――そんな弱さ。
 
 けれどその智ちんの弱さは結果的に同盟をピンチにさらし、惠を死に向かわせるという最悪極まりない事態を招いてしまう。
 どっちも選ぼうとしたが為に、どっちも失いそうになる。

 ……そらバースディもするわなぁ……。

 結局『選べなかった』智ちんが最後に縋ったのは狂気。
 同盟の危機を排除し、惠と同じ怪物になる。
 しかも、山ほどの殺人を犯しながらも惠が耐えてきた、超えなかった狂気の一線を飛び越えて。
 それは惠を救うためだったのか、同盟を救うためだったのか、それとも自分自身を救うためだったのか……

 ここでの敵は本編でもクズだった三宅。宮、ゆんゆんルートの敵に比べると格段に下衆で、同情の余地なく、しかも同盟を直接ゆさぶってくる。ある意味「同盟が倒すべき敵」。
 それにもかかわらず、三宅はみんなによってではなく、壊れた智ちんと惠の手によって倒される。
 ここもまた、皮肉な話だ……。

 ただ個人的に、これをBADと決め付けるのもちょっと違うかなと思います。
 終章を見ると、このルートもまた智ちんと惠が選んだ未来であることに変わりないし、100%ハッピーは不可能でも、まだ希望は潰えていないように思うのです。


4章【VS姉さん】

 最凶BADの惠ルートから続いて突入する悪夢の連鎖、それを招いた姉さんとの戦い。何をどうしても詰んでしまう(らしい)智ちんを救うために希望を探し求め、絶望の海に溺れてしまった姉さんと、それでもなお戦おうとする智ちん。諦めかけたときに仲間たちが出てきてがんばれがんばれする姿はなんという少年漫画!
 ……なんだけど、熱さよりも切なさの方が勝るのは相手が智ちんのことだけを考えてきた姉さんだからなんでしょう。
 ここでも現れるのは『選べない』という智ちんの弱さ。仲間のために姉さんを排除しようとするけれど、できない。それは惠ルートで誰も選べなかった姿と重なる。
 対する姉さんはひたすらに『選び続けてきた』存在。智のためという一点『しか』ないからこそ、容赦なく選びまくれるという強さであり、弱さ。
 『選べない』智ちんVS『選べる』姉さん。

 智ちんは既に惠ルートで『選べなかった場合の悪夢』を体験しています。
 惠ルートからスタッフロールすら挟まず突入するのは、おそらくこの『選べなかった場合』のインパクトを引き継ぐためなのでしょう。
 ただ、4章は惠ルートではない。智ちんは仲間たちの助けを拒まない、だから仲間たちが助けてくれる。そのおかげで狂気に落ちずに済んだ。
 そして選んだのは「一人はみんなのために みんなは一人のために」。
 みんなのために、一人(自分)を捨てる道。
 けれどそれは捨て鉢ではなく、希望を胸にした決断。

 物語におけるメガンテってなんでこう涙を誘うのだろうか……ゲームでは「効かなかった」の一言で終了するダメ呪文なのに(待て)



終章【智惠と可能性と俺達の戦いはこれからだ】

 メガンテした智ちんがたどり着いたのはからっぽ学園。
 
 ……なのになぜかそこには惠がいたりする。
 なんですかこの真ヒロイン。本編の時点で美味しいところを持っていくことに定評があった(自分基準)ですが何この待遇特別ってレベルじゃry

 と、惠マニア的には狂喜乱舞してその後の展開に号泣して「お前がナンバーワンだ……」とか意味不明なことをつぶやいたりもしましたがまあそれはおいといて。

 なぜあそこで待っていたのが惠なのか、という話。
 確かに彼女は4章ではほとんど出てこなくて(頑張れコールで復活の直前に一瞬だけしか出なかった)、あれどうしたのかなとは思っていたのですが……

 思い出すのは本編茜子ルート。

 智ちんより先に究極の「一人はみんなのために みんなは一人のために」をやってのけた人がいました。
 それが惠。
 事情はどうあれ、「みんなのために生命を捨てる」という決断ができる人間はそうそうはいない。
 そして、智ちんがどうしてもどうしても救いたいと願い続けている人物でもあります。
 智ちんが惠を選んだ惠ルートでさえ、彼女に救いは与えきれていなかった。
 その、仮初の幸せすら与えられないという悔しさが、智ちんと惠を結びつけ続けている。

 だからこそ、あの場に「呪いも病気もない惠」がいたのかなぁ、などと。
 智ちんが心の底から求め続け、必ず出会いたい、手に入れたいと思い続けている未来の形こそ、あの惠なんだろうし。
 ……なんですかこの真ヒロイン(2回目)。

 そして始まるワルツで問答。
 萌えるってレベルじゃねーぞ!! あと倒錯しすぎだ二人共!! だがそれがいいッ!!
 
 まあそれは置いといて。
 
 あそこでの延々問答こそあの二人に与えられた役割であり、
 あの教室はいうなれば『智惠の間』なんだろうなぁという気がしました。
 TAMATUで智ちんと惠が「智惠」から来ているという設定が出ていますが、終章のあのシーンは二人の名を体現したものだろうなと思うのです。
 智惠を追い求め、そのために語り合う二人。
 ワルツでくるくると「回りながら」答えを探していく。
 
 智惠ってなんぞや? と辞書で引いてみたらこんなのが出てきました。
(yahoo辞書より引用)

=============================================
ちえ[―ゑ] 2 【知恵・▼智▼慧・▼智恵】

[1] 〔専門〕 仏 空など仏教の真理に即して、正しく物事を認識し判断する能力。
   これによって執着や愛憎などの煩悩(ぼんのう)を消滅させることができる。
   六波羅蜜の一つ。般若(はんにや)。《智慧》

[2] 事の道理や筋道をわきまえ、正しく判断する心のはたらき。
   事に当たって適切に判断し、処置する能力。

============================================


 ……はい、おもいっきりそのまんまです。智と惠が語り合っていた内容そのもの。
 二人はあの場所で智惠について語り合い、そこから解決策を見出していこうとする。
 そして、語り合いによって「可能性を追求することの意味」を知る。

 けれど、二人は一つではなく、『智』であり『惠』。
 そして二人はやっぱり人間で、超えられない、わりきれない、ままならないものがある。
 智と惠が結ばれた、智惠の形であるはずの惠ルートがあんな悲惨な終わり方をしたように。

 智惠の結論に至っても、それでも生きたいと泣き叫ぶ惠。
 その姿を見た瞬間、惠ルートは間違いではなかったんだという気がしました。
 彼女には智惠を追求する意志があり、思索があり、結論を選ぶ勇気もある。にも関わらず、最後の最後の心の奥底の『生きたい』だけは覆せない。

 そして、惠ルートにおける智は壊れるわ同盟は捨てるわ怪物になるわでえらいこっちゃだけど、それでも惠の究極の願いだけは叶えることができたんだ、と。
 惠ルートというのは良くも悪くも、最も二人が人間らしいあり方をしたルートなのかもしれません。

「惠の呪いは“愛”だと思う」という超爆弾発言が智ちんから繰り出されますが(これ見た瞬間リアルに目が点になった)、そういうことなんだろうなぁ。
 上に引用した「智惠」の意味を見ると、智惠を手にいれれば愛憎や執着を消滅させられるとあるんですが、その片割れである惠が愛を背負ってたらそら逃れようがないべ、みたいな。
 しかも最後の最後に告白するし(これは惠が背負うのが“愛”だからというのもあるんでしょう)
 ……なんですかこの真ヒロイン(3回目)

 ただ、惠は「智が一番」ではあっても「智だけがいればいい」という状態ではないので(ここが惠と姉さんの違いだと思う)、惠ルートは決して幸せではないのですが。

 そんなこんなで、二人が思い悩んだ善悪やなにやらの結論は出ないまま。
 それでも二人は『智惠』を追い求める『智』と『惠』であるがゆえに、再びの可能性を求めてしばしの別れを選択する。

 そして校舎を出た先で待っているのは姉さん。

 姉さんがなんであそこにいるのか……と考えて。
 彼女が『可能性の化身』だからなんだろうなと思いました。

 惠に会ってから姉さんという流れは、『智惠』を手に『可能性』を得るということなのかなと思うのです。
 といっても、その『可能性』の化身は既に終わっている、不可能の化身でもあるわけですが。

 あそこで出てくる姉さんが壊れていないのは『可能性』だからなんだろうなぁ。姉さんは『不可能』に押しつぶされて壊れてしまったわけだし。
 智ちんのメガンテで開けた可能性の世界なら、姉さんが囚われた『不可能』からも離れられる、ということなのかも。姉さんが「この先は私も知らない(=不可能と決まったわけではない)」と言ってるし。

 可能性の限界を可能性の化身である姉さんに改めて説かれ、それでも可能性を追い求めると告げる智ちん。
 だからこそ、不可能の化身である姉さんは言う。
「やっつけて、やりなさい」と。
 なぜなら、それが智の『可能性』だから。不可能に溺れた自分に一瞬でも可能性を信じさせてくれたから。

 そして僕らはまた出会う――

 ……正直、
 ここまで美しい「俺達の戦いはこれからだ」があるとは思いませんでした。

 いわゆるグランドルートが最後まで出されず、あえて「俺達の戦いはこれからだ」で終わらせたのは、提示しないことによる可能性の広がりを意味しているのかなと思います。
 
 グランドルートを作ることは可能だけど、「これはグランドルートです」として提示してしまえば、その瞬間に『可能性』は潰える。
 
 私はFD発売前に本編の茜子さんルートが「グランドルート」と呼ばれていたことに違和感があったのですが、その違和感の正体がはっきりした感じです。
 どれかをグランドにしてしまえば、その他は否定されてしまう。
 だからこそ、始まりのところへと戻る。可能性はそこから始まるから、と。

 終章は終わりであり始まり。誰かと結ばれた処ではなく、誰とも結ばれない処でもなく、「まだ始まっていないところ」が物語の終着点になっているのがまさに「るい智」の「るい智」たる所以なのでしょう。

 長々ぐちゃぐちゃ書きましたが、素晴らしい物語だったという結論につきます。
 プレイしなおして胃が痛いし涙出る頭痛いしぐるぐる考えて眠れなくなるけれど、1ユーザーに過ぎない自分がそこまでのインパクトを受け、こうして長々と感想を連ね、それでも足りないインスピレーションを受けていたりする。

 これほどの強い印象を受ける作品に出会えることはめったにありません。
 本当に貴重な、そして素晴らしい体験をさせていただいたと思います。

 暁works様、本当にありがとうございました!


 ……というわけで私は「俺達の戦いはこれからだ」をしこしこと作成する作業に入りたいと思います(懲りてない)
 諦めないからな! 私は絶対諦めないからなー!!(落ち着け)